とある日の出来事

　ミニチュワールドをパトロール中のコスモ。
　その最中、助けを求める声が聞こえて急行する。

　辿り着いたのは、氷河期を迎えたかの様に凍り付いた惑星。
　そして助けを求める声は、その星自身が発していた。
　思わぬ事態に困惑しつつも、コスモは惑星へと降り立つ。

　吹雪の中を歩いていると、倒れている男性を発見。
　助け起こして話を聞くと、譫言で「医者を……」と繰り返すばかり。
　取り敢えずと神炎破で男性を回復させつつ、彼が歩いて着たと思われる道を進む。
　やがて、目の前にドーム状の建物が見えた。

　コスモが男性を連れて中へと入る。
　ドーム内には老若何女、合わせて十数人の姿が有った。
　その内の一人が「君は医者か！」と尋ねる。
　コスモが首を振って事情を話すと、彼等は明らかに落胆し、項垂れてしまった。

　改めて事情を聞くと、信じられない言葉が返って来た。
　竜神の使いが、この星を凍り付かせた、と。

　ある日、竜神の使いを名乗る男性がこの星を訪れ、一方的に神罰を宣言した。
　嘗てこの星は温暖な気候に恵まれていたのだが、彼の連れた獣に「明日を喰らうぞ」と宣言した途端、どんどん星の気候が変わっていき、今では極寒の星へと変わってしまった。
　この星の防衛軍は竜神の使いと戦ったが、、兵器による攻撃は一切効かず、やがて施設自体が凍り付いてしまい、行動不能と為ってしまった。
　人々はドーム状のシェルターに逃れたが、長く続く吹雪の所為でライフラインが崩壊しており、連絡や荷物の受け取りが非常に困難な状況で、食料や燃料も足りなければ、ドーム内の病人への治療も出来ずに居る。
　先程の男性は妻が病気で倒れてしまい、この危機を救う為、別のドームから医者を連れて来ようとしていた。

　一通りの事情を聞いたコスモは再び神炎破を放ち、ドーム内の人々、全てを癒した。
　驚く一同に、竜神の使いは一人しか居ない事、自分こそが竜神である事を教えると、この星を救うと宣言し、外へと出る。

　吹雪の中を進むコスモ。
　その最中、先程よりも明確に、星の声が聞こえて来た。
　彼が助けを求めていたのは自らの為ではなく、自身に暮らす生命体の為だった。
　自称竜神の使いが連れて来た獣に、星のエネルギーを根刮ぎ奪われてしまった。
　僅かに残されたエネルギーを必死に燃やしてはいるが、完全に凍え朽ちるのも時間の問題だった。
　だから、その前に、一人でも多くの生命体を助けてあげて欲しい。
　それが、惑星の願いだった。

　コスモは、その願いに応える。

　片手を地面に突き立てると、ハイカタクリスタルでチャージした自身の生命エネルギーを解放。
　放たれたエネルギーは地面を伝い、星の核へと届く。
　ソレを続ける事、数秒。

　ドームを出て来た人々は驚愕した。　
　あれだけ続いた吹雪は止み、空には太陽が輝いていた。
　それだけではない、大地を覆った雪は溶け、氷付けと為っていた自然も青々しさを取り戻している。
　大地が、惑星が甦っていた。

　雪に埋まっていたドームの階段を降り、久方振りの地面に降り立つ人々。
　その中にはコスモが出会った男性、その妻と子供の姿もあった。

　空を見上げる子供が叫んだ。
　皆が見上げる先、遠ざかるコスモの姿。
　人々は声高らかに、竜神への感謝の言葉を揚げるのだった。

＊


　……と、こんな事がありまして。



　自称、竜神の使いか……。
　単なる騙りなら兎も角、星のエネルギーを喰らう獣ってのは、ちと気がかりだねえ。