廃墟の語り場 トリコロSS
トリコロ、仮面ライダー、その他四コマ萬画やら普通の萬画やらを読んだり語ったり、対話式私信を送ったりする場所です。
作成日2006年4月3日、移転日は2009年5月13日。
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■とある日の夜■



 見慣れた木目模様の天井が、常備灯の淡い光に照らされている。



 布団の中からその光景を見ていた七瀬八重は、枕元に置かれた携帯電話へと手を伸ばしディスプレイを確認した。

 深夜2時。

 本来の起床時間には遥かに早い。



「……?」



 不思議そうに、八重は首を傾げた。

 何故、こんな時間に目が覚めたのだろう。

 加えて、妙に意識がハッキリとしている。



「……ああ、そう言えば」



 巻き戻される記憶の中、一つの思い当たり。

 風呂上がり、就寝前での時間を居間で過ごした際にコーヒーを飲んだのだった。



 潦景子が飲んでいる姿を見ての気紛れだったが、青野真紀子や由崎多汰美に半ば本気で「眠れなく為る」と心配された事が、少しショックだった。

 確かに身体の成長は色々と足りていないかもしれないが、別に子供な訳では無い。



「……筈、なんですけどね」



 八重は呟き、顔を顰める。

 景子と一緒に布団へと潜った後、何時も通りに眠る事は出来た。

 が、こんな早くに目が覚めていては駄目だろう。

 友人達の忠告通り、就寝前のコーヒーは控えるべきかもしれない。



「そう言えば、にわちゃんは……」



 八重が隣を見ると、景子は布団の中で可愛い寝息を立てている。



 幸せそうな寝顔で、スヤスヤと。

 八重と同様、コーヒーを飲んでいたにも関わらず、だ。



「……」



 何とも言えぬ敗北感を覚え、思わず八重は目を逸らす。



 視線の先はカーテンの閉められた窓。

 ユラユラ、と。

 隙間から、柔い光が差し込んでいた。



「七、瀬」

「ッ!!」



 突然、名前を呼ばれ、八重は思わず身体を震わせた。

 慌てて振り返るが、声を出して呼んだ筈の景子は、変わらぬ寝息を立てている。



「……寝言?」

「……」



 だったのだろうか。

 八重は小さく安堵の息を漏らしてから、、その頬を緩ませる。



 今、景子の夢に自分が出演している。

 それが、何となく嬉しかった。



「にわちゃん」



 お返しとばかりに、小さな声で呼んでみた。

 無論、景子は寝ているのだから、八重の声に応える筈が無い。



「にわちゃん」



 それでも、八重は再び景子の名前を呼ぶ。

 あわよくば、もう一度、自分の名を呼んで欲しくて。



 今度は背後から聞くのでは無く、その姿を見たくて。



「にーわーちゃん」

「……ん」



 三度目の正直か。

 少し間延びした言い方の呼び声に、景子は小さく身動ぎした。



「んぅ、、八重」

「え……」



 人懐っこい笑みを浮かべ、開かれた口から発せられたのは自分の名前。

 しかし、それは彼女からは一度も発せられた事の無い単語。 



 予想外の言葉に一瞬、固まる八重だったが、、やがて苦笑いを浮かべつつ、再び布団へと潜り込んだ。心持ち、目覚めた時よりも景子との距離を縮めて。



「今度は私にも言って下さいね? ……景子」



 耳元で囁いてから、八重は瞳を閉じた。 



 夢の中で自分よりも先に「名前」を言われた自分への嫉妬を隠す様に。

 

 

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■早朝光景■

 土曜日の朝。

 半日行われる授業の為に暖かい布団の中から這い出て、冬の頼りない太陽を頼りとして寒気に素肌を晒したのも、、今となっては良い思い出だ。

 二人分の体温で温まった布団。その中で微睡を楽しんでいたのは潦景子である。布団から顔だけを露出させる彼女の視線は、、隣で静かな寝息を立てている七瀬八重の元へ注がれていた。
 その寝顔を例えるのなら、、やはり友人達が言った”天使”という言葉がしっくりとする。関西人の話では”堕天使”でもあるらしいが、、こんな愛らしい”堕天使”が相手なら、何処まで堕ちてしまっても構わないと思う。


(……良いなあ)


 そんな呟きを抱くのは、、今があまりに幸せだからか。

 彼女の友達である事。
 彼女のご飯を食べられる事。
 彼女の家に泊まれる事。
 彼女の寝顔をを独り占め出来る事。

 そして……。


(……七瀬の恋人である事)


 景子はそぉっと、八重の頬に手を触れてみた。その肌はとても柔らかく、、そして冷たかった。
 当然といえば当然だ。布団の中にある身体と違い、頭は昔必死に耐えた寒気の中にあるのだから。
 最初は唯の悪戯心で頬に触れたのだが、この冷たさを知ってからでは、、再びその可愛い寝顔を外気に晒すのは躊躇われた。かといって、布団を被せると息苦しくなる。
 暫し”手を退けるという選択肢の無い”黙考をした後、、景子はそのままの姿勢で瞳を閉じた。


 ……今、自分が起きている為に必要な熱が、彼女に与えられたら良いのに。

 
 そんな事を思うのは、自分が微睡の中にいる為だろう。そう景子は結論付けた。
 
 

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■同衾(どうきん)■
 
 一つの夜具に一緒に寝ること。男女関係についていうことが多い。ともね。
 
 ……その意味を知るのがもう少し早かったならば、二人にとってその単語は笑い話の一つに変わるだけで済んだのだろう。

 しかし、残念ながら今の二人は地面に咲く青空の前に、互いに胸の内を明かしてしまった後だった。

「……」
「……」
 
 辞書を広げたまま硬直する二人。
 それは揃って”恋人としての同衾”を始めて迎える初心さ故か。

 別に、何かをする訳では無い。
 だが、何かをする関係でも在る。

「……そろそろ、寝よう?」

 暫しの沈黙後、生まれ始めた気不味い空気を打ち砕いたのは告白をした者だった。
 何時もより、やや固い声ながらも、彼女は必至に”何時も”を纏い布団の中に潜った。

「……ええ、そうですね」

 一人残された少女は呆然としていたが、やがて普段と変わらぬ笑みを浮かべ、彼女の隣へと潜り込む。

 虚勢と勇気を振り絞り、一歩を踏み出す事が出来る人。
 その人の手を愛で掴み、更に前へと進む事が出来る人。

 例え恋人同士に為ったとしても、二人のやり取りは友人だった頃と変わらない。

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〇楽園のありか〇


 八重と景子が、川沿いの遊歩道を歩いていた時の事。


「西に行きたいと、願ったことがあるんです」


 夕日を見つめながら零す八重。


「西へ?」


 突然の告白に景子は首を傾げる。


「ええ」


 答えた後、八重は景子に向き直った。その顔を見た景子は息を飲む。
 夕日に照らされ逆光になった彼女が、あまりにも悲しそうに笑っていたからだ。


「知ってますかにわちゃん。西の果てには楽園があるんですよ」
「楽園?」
「ええ、そこに行けばどんな夢も叶って、生きることの苦しみさえ、消えてしまうらしいです」


 そこまで言って、もう一度夕日に目を向ける八重。
 一方景子は、八重の最後の言葉に動揺していた。


──生きることの苦しみさえ……──


「きっと良い所なんでしょうね、空で一番高い所に居る太陽が、好んで降りていくくらいなんですから」


 夕日を見据える八重。
 そんな彼女を見て、景子は意を決して訊ねた。


「七瀬」
「はい?」
「七瀬は、、生きる事が苦しかった事があるの?」


 はっ、となる八重。しばらく黙り込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「…はい、思いましたよ。昔、、ちょっと昔に」


 微笑む八重。普段とは違いすぎる悲しい、哀しい瞳で。

 景子はそっと、八重を抱き締めた。


「にわちゃん…」


 見上げると、今にも泣きだしそうな景子の顔。


「七瀬、、今も苦しいの?」


 首を左右に振って答える八重。


「今は、皆が居るから、苦しくないよ」


 それでも心配そうな景子に、今度は優しく微笑みながら問い掛けた。


「楽園を目指した人がどうなったか、知ってますか?」
「え、、どうなるの?」


 答えが分からず、問い返す景子。


「旅立った人は沢山居ましたが、楽園はあまりに遠くて、故郷に帰るんですよ。それに……」


 もう一度、夕日を眺める八重。


「……辿り着いた人は気付くんです。西の果て、楽園がどこなのかを」
「西の果て、、あっ!」


 景子も気付いた、楽園が何処なのか。


「そろそろ帰りましょうか。あんまり遅いと皆、心配しますし」


 八重が振り向いた。今度は何時もの、、愛らしい満身の笑みを浮かべて。


「……うん」


 微笑み返した景子の手を握り締め、二人は帰路に向かった。




西を真っすぐ目指すとね

故郷に戻ってしまうんですよ

そのときに皆気付くんです

ここがそう

楽園なんだって

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〇二人の甘い午後〇

 七瀬家は七瀬八重の部屋で読書中の二人。潦景子はふと、八重が何かを銜えている事に気付く。


「あれ、七瀬何食べてるの?」
「ふぁい?」(はい?)


 本から目線を移す八重。その口から白い棒がにゅっと突き出ている。


「あっ、キャンディ!!」
「ふふ、ばえひゃいまひひゃか」(ばれちゃいましたか)


 悪戯っぽく微笑み、棒付き飴を口から出す八重。


「にわちゃんも食べます?」
「ホント!?うんっ!」


 八重の言葉に笑顔になる景子。そして景子の返事に妖しく笑む八重。


「それじゃあ正座になって下さい」
「え、、うん」


 八重の言葉を怪訝に思いながらも、言われるがままに姿勢を直す景子。八重は景子の目の前まで移動する。


「いいって言うまで目をつぶってて下さいね。はい、お口開けて…」


 八重の言葉どおり、景子は目をつぶり口を開けた。八重はその口にさっきまで自分が舐めていた棒付き飴をそっと突き刺す。


「はい、どうぞ」
「はむっ!? うん…」


 差し出された飴玉を口で銜え込んだ後、棒の部分を掴もうと手を伸ばす景子。


「だめですよ」


 それを八重が制した。景子の片手を掴んだ後、残っていたもう片方の手も重ねて拘束する。


「これから飴が無くなるまでじっとしてて下さい。あ、よだれも飲んじゃダメですよ?」
「うん、、ふあッ!?」


 景子が奇声を上げた。八重が景子の口から飛び出ている棒を掴むと、それを細かく動かし始めたのだ。前後左右上下、、さまざまな角度で飴玉が口内を跳ね回る。


――じゅぷ、ぐちゅ、くちゅ……。


「ふ、ふぐっ、うん…!!」


 溶け欠けの飴玉が肉壁を擦るたび、喘ぎにも似た叫びを上げる景子。その頬は赤く染まり、鼻息は荒くなっていく。



「ふふ、飴玉が溶けるまで我慢して下さいね」


 意地悪な笑みを浮かべながら、尚もその行為を続ける八重。

 結局彼女の行為は、飴玉が溶けてなくなる十分間続いたのだった。





――十分後。


「はい、もう飲み込んでいいですよ」


 すっかり飴玉の溶けた棒を取出し、八重が笑い掛けた。


「む…」


――ゴクンッ。


 口内に溜まったよだれを一気に飲み込む景子。


「美味しかったですか?」
「う、うん…美味しかったよ…」


 まだ顔を紅くしたまま、たどたどしく返事を返す。


「そうですか…ところでにわちゃん」


 ゴソゴソとポケットを漁る八重。


「まだ飴が残ってるんですけど…」
「…え」









「どうです、もう一本食べますか?」






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■告白■

 水溜まりに映る、雲一つ無い青空。


 梅雨時によく見られたこの光景。雨上りの七瀬家の庭にも、複数の水溜まりと複数の青空があった。


「ふふっ…」
「どうしたんですか? にわちゃん」


 縁側に座って微笑む潦景子。隣に腰を下ろした七瀬八重は、不思議そうに景子を見つめる。


「ん~、、綺麗だなって思ってね」
「あー、、そうですね」


 水溜まりを指差す景子に、頷いて答える八重。


「私、、青空が好きなんだ。正確には、空の清々しい蒼が……」
「へえ、、どうしてですか?」


 八重の問いに、景子は暫し黙考した後、、意を決してこう答えた。


「……私の好きな人に、似合う色だから」


 遠回しな告白。気付かれないと思ったからこそ、景子はこう言えた。


「そうなんですか。……私は水溜まりが好きなんですよ」


 案の定、八重は言葉の真意に気付かなかった。景子は対して落胆もせずに、八重の発言に問い返した。


「へえ、どうして?」
「ん~そうですね…」


 八重も景子同様暫し黙考した後、、静かにこう告げた。


「私の好きな人の名字が同じ意味だったんですよ。水溜まりと」
「へえ、水溜まりと‥‥‥うええええええええええっ!?」


 相槌を打ってから数秒、、景子は驚いて声を上げた。


「そ、それってどういう……」
「さて、どういう意味でしょう?」


 動揺を隠せない景子に、八重は悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「にわちゃんの言った、蒼が似合う人が誰なのか教えてくれたら、、私もちゃんと言いますよ?」
「えっ!? そ、それって……」


 八重の言葉の真意を悟り、景子は今更ながらに頬を染めた。


 遠回しでは無く、直接……。


「わ、私‥‥‥私は、七瀬八重さんの事が好きです」


 羞恥から言い淀むも、景子は一気に言葉を発した。
 途端、八重の悪戯な笑みは優しい、、暖かい笑みへと変わる。


「はい。私も、、潦景子さんの事が好きです」


 八重が答えた後、二人はお互いを見合って笑った。



 穏やかな午後の昼下がり。



 相も変わらず、、静かな時間が流れている。

 

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