廃墟の語り場 オリジナル小説
トリコロ、仮面ライダー、その他四コマ萬画やら普通の萬画やらを読んだり語ったり、対話式私信を送ったりする場所です。
作成日2006年4月3日、移転日は2009年5月13日。
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 あの日に言えなかったことを伝えたい。

 そんな思いを胸に、俺は此処に来た。

 大丈夫、今の俺には隣に居てくれる人が居る。



 だから、大丈夫。



〇A bird having a tusk〇

 

「静かだな、、まあ良いか」



 平日の墓場は物淋しい。

 あまり騒がしい場所が苦手な少年にとって、それは幸いな事だった。

 だが、その表情は物憂げしい。

 原因は、、やはり空にある。



「だが、、こう晴れていてはな」



 見上げれば紛う事の無い蒼穹。世間一般的における墓参り日和だが、どうにも少年にとっては、あまり良い日和ではないらしい。

 

「曇らないかな、、無理か」

 

 幼稚園児とその母親を敵に回し、一部の父親を味方に付ける様な台詞を、彼は溜め息と共に零した。

 

 多く見積もっても中学生程度を思わせる背丈に、肩まで伸ばした黒い髪。

 まだまだ幼さを残す顔に、年不相応な鋭い眼差しが宿る事を知る人間は数少ない。

 黒の上下にやや大きめのコートを来た彼の両腕にはそれぞれ、新聞紙に巻かれた仏花と水の入った桶を掴んでいた。

 

「……遅いな」

 

 暫し見据えていた空から視線を落として、少年は振り向いた。

 彼の目線の先には砂利を敷いただけの駐車場、その先にある自販機の前に佇んだ少女へと向けられる。



 高校生、少なくとも少年以上の年齢だとは思わせる背丈に 艶の有る黒髪をポニーテイルで纏めた、大きな瞳の彼女。

 白のワンピースの上に少年とお揃いのコートを羽織った彼女の腕には、お供え物の入れられたビニール袋が、しっかりと握られている。



「栞、まだか?」



 駆け寄るのも面倒に思い、その場で大声を出す少年。



「ちょっと待って~!」



 少年に”栞”と呼ばれた少女は慌てた様子で自販機のボタンを押す。そして出て来た缶を拾うと、急いで少年の元へと駆け寄った。



「はい、クロウ君の分!」



 どうやらこれが悩みの種だったらしい。

 いや、正確には「何でも良い」等と数分前に答えた少年の所為か。

 ばつの悪さを感じながら、少女に”クロウ”呼ばれた少年は差し出された缶を受け取る。



「ああ、済まない。……君の分は?」

「え、、ああ!?」

 

 何気ない問いに固まる少女。

 少年の分を買った時点で満足してしまい、自分の分を忘れていたらしい。



「忘れてた! ちょっと待ってて!!」

「おいおい……」



 再び駆け出す少女に苦笑いを浮かべながら、少年は缶ジュースのプルタブを開け、中身を喉に流し込む。

 

 ……緊張で乾いていた少年の喉に、炭酸飲料は刺激が強過ぎた。

 



 

 墓地の外れに位置した、真新しい墓石。

 入り口からは遠いが、新設された水場は近くに有るのだから恵まれていると言えばそうなのだろう。



「……お久しぶりですね、御主人。と言っても、2週間前にも来ましたが」



 感慨深そうな呟きと裏腹に少年は軽く会釈をし、少女は無言で深く頭を下げる。

 少年は長き時を語る趣味を持たず、少女にとってその男性は殆ど縁が無い。

 だからこその、態度の差。

 

「……それじゃあ、俺は墓石を拭いてるから、栞は湯呑と花受けを頼むよ」



 挨拶以外は特に話す事もないらしく、銀色の容器と湯呑みを少女に渡すと、少年は墓に登り水で濡らした雑巾で墓石を拭き始める。



「うん、分かった!」



 少女は少年から受け取った物を両手に水場へと走った。

 そんなに急ぐ必要も無いのだが、指摘するのも面倒なので黙っておいた。

 思えば今日は少女の走る姿ばかり見ている気がして、青年は小さく笑みを漏らす。



「……貴方が黄泉路を歩んでから、一年が経ちました」



 少女の姿が見えなくなったのを確認し、おもむろに口を開く少年。

 それは思い出話なのだが、、そこに御主人は存在しない。

 やはり少年は、長き時を語る趣味は無い。

 だが、知らぬ時を伝える誠実さは抱いていた。



「この姿を得てからは半年、、やっと慣れましたよ。今は彼女、、栞と一緒に暮らしています」



 喋りながらも、少年は手を止めない。

 全体を拭き終わると墓石を降り、水桶からしゃもじを取出した。

 掬った水を、周りから少しずつ水を掛けていく。



(いいかい、クロウ。お墓の上から水を掛けては駄目だよ)

「……はい、御主人」



 おぼろげに思い出す昔。

 かつては囁かれるだけだった言葉に、少年は今更ながら相槌を打った。



(お墓というのは死んだ人そのものだからね、頭から水を浴びたら寒いだろう?)

「確かに水は厄介ですよね、、色々と疲れますし」



 苦味の混じる笑みはかつての、御主人と出会う前の記憶故か。

 少年は水を掛け終えると、手の持ったままの雑巾を水桶に入れた。

 綺麗だった水に汚れが広がり、みるみると濁っていく。 

 

(だから、クロウも覚えておきなさい。と、君には不要の知識だったかな?)



 老体には難しかっただろうに、少年の記憶の中の御主人は、墓の上へと乗り墓石を丁寧に拭いていた。

 そして全てを終えてから、肩に乗せたカラスを優しく撫でるのだ。暖かい微笑みと共に。

 その手も、笑みも、今は少年の記憶にしか無い。

 

「御主人、俺は……」



 呟き掛けた言葉は、短く響いた破壊音に遮られた。

 何かが落ち、砕ける音がして、一気に現実に帰った少年。辺りを窺えば、通路に座り込んた少女の姿が映る。

 

「どうした!?」

 

 少年は少女の下に急いだ。







「これは……」



 音の原因は、少女の近くに来てすぐに判明した。



「クロウくん……」



 少女は今にも泣きだしそうな顔で、駆け付けてくれた少年を見上げる。

 彼女の前に広がる水溜まり。

 その中には横になった花受けと、砕けた湯呑みの欠片。

 きっと転んでしまったのだろう。金属性の花受けは無事だが、焼き物だった湯呑みは半ば面影を残しつつ、それでもしっかりと割れていた。



「怪我はないか?」

「うん、大丈夫。でも……」



 目線を一番大きな湯呑の欠片に落として、少女は謝った。



「ゴメン、、湯呑が割れちゃった……」

「大丈夫、、御主人は物に執着がなかったから、そんな事で怒ったりしない。それに、物は何時か壊れる事を知っている人だったし……」

 

 言いながら、少年は少女の手を握って立ち上がらせる。



「ここは俺が片付けているから、栞は花の長さを調節していてくれ。大体、輪ゴムの手前で切れば良い」

「……うん、分かった!」



 名誉挽回とばかりに力強く頷くと、少女は一目散に墓前に向かう。

 その姿に安心してから、少年は湯呑の片付けを始めた。

 砕けた湯呑みを拾い上げ、その欠片を次々と手の平に乗せていく。

 ビニールを取りに戻りるべきだろうが、どうにも面倒だった。

 今、彼が御主人と呼ぶ男性が此処に居れば、きっと彼を叱っただろう。

 

(危ないから横着は止めなさい、とな。申し訳ありません、御主人……)

 

 それでも少年は作業を止めない。彼の手が動くたび水溜まりの中から破片が消え、かわりに少年の片手の重量が増していく。



「よし……」



 水溜りの中を見渡し粗方拾い上げた事を確認すると、少年は右手に乗った欠片達を見据えた。



「形ある物は何時か壊れる、、か……」



 自身で話した言葉に溜息を漏らし、少年は花受けを片手で抱えてから墓前へと向かう。

 







「これで大体終わったかな」



 一連の作業が終わり花が飾られた墓石。

 線香をオイルライターで炙りながら、少年は隣の少女に話し掛ける。

 だが、彼女の返事がない。



「おい?」

「え!? あ、その……」



 まごついた返事を返す少女に対して、少年はため息交じりに問い掛けた。



「どうした、まださっきの事気にしてるのか?さっきも言ったが御主人は物に執着がな……」

「ちがうの」



 言葉を遮る少女。訝しむ少年を見つめて、彼女は問い掛けた。



「ねえ、、どうしてここに私を連れてきたの?」

「……!」



 少女の問いに、少年の鼓動が一気に跳ね上がる。



「一人で十分できたよね? クロウ君、器用だし……」

「それは、、そうだが」

「今までだって何度か一人で来てるんでしょ? 2週間前にって、、どうして……」

「待った」



 少女の言及を止める少年。ライターをポケットにしまうと、白い煙を上げた線香を置き、困った様に髪を掻いた。



「確かに、墓参りだけなら一人で出来る。それぐらいの、、勇気はある」

「……勇気?」

「ああ」



 思わぬ単語に戸惑う少女へと振り向く少年。



「ただ、一人ではどうしても、今までどうしても出来なかった事がある」

「……それって?」

「お願いだ栞。何も言わずにあと少し、、もう少しだけ、この弱虫に付き合ってくれないか?」



 口に小さな笑みを浮かべ、それでも真剣な瞳の少年のお願いを、少女が断れる筈が無かった。







 線香の煙が空へと昇る。御主人の前で両手を合わせ黙祷する二人。

 

(なんだろう、クロウ君が一人じゃ出来ない事って……)

 

 眼を閉じながら、少女は今さっきの少年の言葉、その意味を考えていた。



(無いよね、、クロウ君が出来ない事なんて)



 少年と共に暮らし始めてから2ヶ月。

 長くは無いが、互いの事をそれなりには知る事が出来る期間。

 彼女の記憶の中で、少年は特に苦手という事が無かった。

 しいて言えば、コンピューター関連の事だろうか。

 以前試しに電卓を渡した時も操作方法に間誤付き、結局は暗算で計算を行なっていた。



(でも、お墓では関係ないよね?)

「御主人」



 隣からの声に視線を移せば、少年は既に黙祷を止め墓石を見据えていた。



「遅くなりましたが……」

 

 次に続いた少年の言葉に、少女は愕然とした。



「今よりこの場を以て、御主人に与えられし[クロウ]の名、、お返しします」





 

 昔、一羽の鴉が居た。

 

 自然の中に産まれ育ち、やがて1人の老紳士と出会った牙を持つ鳥が。



 老紳士を慕い、生涯を終えるまでの短い時を共に過ごした”彼”が手にしたのは1つの名。

 

 その身を悪魔に変えられようと、決して忘れる事の無かった名。



 クロウ。



 それが、一羽の鴉だった少年の名前だった。









「今よりこの場を以て、御主人に与えられし[クロウ]の名、、お返しします」



(え……?)



 驚愕し眼を見開く少女を尻目に、少年は言葉を続ける。



「貴方と過ごした日々のおかげで今の俺が居ます。これまで、ありがとうございました」



 静かに頭を下げる少年。少女はその姿を黙って見つめる。

 やがて少年は頭を上げると、まるで糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「ふう……」

 

 尻餅をついたまま、少年は頭に手を添えて笑った。



「緊張したよ……」

「大丈夫?」

「ああ、大丈夫」



 少女が差し出してくれた手を支えに、少年は立ち上がる。



「帰るか」



 墓石を一瞥し、そのまま歩きだす少年。



「え、ちょっと待ってよ!」



 荷物を拾い慌てて追い掛ける少女。



 二人が去った墓石からは、白い煙が空に向かい淡々と昇り続けていた──。







「これが、、クロウ君の出来なかった事なの?」

「ああ、そうだ」



 立ち並ぶ墓石の中を、2人は駐車場側の出口を目指して歩いていた。

 隣りに追い着いた少女の問いに、少年は歩みを止めぬまま答える。



「人間に飼われる動物にとって名前とは、、主と己を繋ぐ鎖のようなモノだ。そしてそれは安泰の約束であり、自然との決別の証でも在る」

「……そうだったんだ」

「まあ、全ての生物がそんなに難しい事を考えている訳では無いんだけどな。これはとある人の受け売りなんだ」

「とある人?」

「ああ、、俺より先に俺と同じ苦しみを味わった人の、、人にされてしまった獣のな。と、それは良いとして……」 

 

 稲妻を纏う銀髪の青年を脳裏に浮かべながらも、少年は話の筋を元に戻す。

 

「本来なら俺は二ヶ月前、、君と出会った時に[クロウ]の名を返さなければならなかったんだ。あの時から俺にあるのは前を歩む[主]ではなく、隣に居てくれる[恋人]だったのだから。だが……」

 

 少年は少女に顔を向けた。いつものどこか強気な表情ではなく、心底弱り切った眼差しで。

 

「……何度か墓参りに来てみたが、結局一人では言えなかった。恐かったんだ、御主人との鎖を切るのが」

 

 自嘲する少年。困った事にこの少年には年相応の笑顔よりもこういう、年不相応の表情が似合う。

 

「情けないよな。家に帰れば君が居てくれるのに、もしも君が居なかったらと考えて、、それが恐くて震えてしまうんだ」

「そうだったんだ、、ねえ? 今も恐いのかな」

 

 サラリと出て来た[恋人]の単語に頬を染めながら、少女は心配そうに少年を見下ろす。



「ああ、だから」



 突然右手を伸ばし、彼女の手をやや乱暴に掴む少年。



「手、握ってていいか?」



 俯きがちに尋ねる少年。

 捕まれた手の平から、彼の震えが伝わってくる。



「うん、いいよ」



 優しく少年の手を握り返す少女。

 少女には仕えし主も、変えられた身体も無い。

 名前は親から授かった物だし、束縛も無ければ約束もされていない。

 元より少年が過去を語らない性格な為に、詳しい事も殆ど理解できていない。



 それでも、今日の少年の行為がとても勇気がいる事だというのは理解出来た。



「私は、アナタの恋人だもん」



 頬を染めながら、少年はゆっくりと歩み始める。それに続く少女。



 鴉の姿を捨てた少年と、鴉だった彼に恋をした少女は帰路を進む。



 新たなる[二人]の居場所へ──。

 





「ところでさ」

「ん?」



 墓石の群れから出て、砂利を敷いただけの駐車場を抜けて。

 歩道を歩きながら、思い出したように問い掛ける少女。



「これからはどう呼んだらいいの?」



 ふと、少年の歩みが止まる。どうやら何も考えていなかったようだ。



「はて、どうしたものか……」

 

 頭を抱える少年。あれこれと考える姿をやや呆れ顔で、しかし笑顔で少女は見つめていた。

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■桜花の独白:17文字のメッセージ■
 
 ……貴方がその結論に至った理由を、出来事を私は知らない。貴方の口から伝えられた事、それが全て。

 貴方がその考えを持った経緯を、私は知らない。仮に知ったとしても、その時の貴方の心を理解する事など、到底無理な話。

 だから私は、貴方を真に理解する事など出来ない。同じ事柄を味わったとしても、それで感じる事は細かい所で違う。

 その違いを知る事が、怖い。だから貴方の苦しみを聞いても、慰め、励ます事が出来ない。

 ……それでも、貴方は私が苦しみ嘆いた時、私を慰め、理解し、励ましてくれた。

 それを私は嬉しく思った。だから、貴方が過去の苦しみを発した時、どうにか元気になって欲しいと思い、17文字の言葉を送った。

 その言葉の真意を、貴方は気付かなくて良い。只自分に都合の良い解釈をし、元気を出して欲しい。

 ……元々、そういう目的の為に送った言葉なのだから。貴方が元気になって欲しいと、願って送った言葉なのだから。


 そんな事を思いつつ、桜花はベットに、眠る彼の隣へと潜り込んだ。

■桜花の独白:もしも自分が……■
 
 暗いニュースを知る度に、もしも自分がそのような犯罪を起したら、、という妄想に囚われる。


 家族殺し、、毒薬散布、、、自爆テロ……。


 犯罪を起す瞬間など、私には分からない。だから、思い浮かぶのは被害者の顔。


 そばに居る人々が、笑わなくなる瞬間。


 その度にいつも、心臓を鷲掴みにされるよう感覚と、その直後に身体を突き抜ける恐怖に襲われる。


 それを感じる限り、それに襲われる限りは、自分はまだまともなのだと安堵している。


 もしもそれを感じなくなったら、それは私が”そちら側”に行ってしまうか、或いは空想という行為を楽しめなくなった時だろう。


 私よ、どうか何時までも怯えていてくれ、恐怖してくれ。


 他人の不幸が蜜の味ならば、その蜜はきっと腐って黒くなっているだろう。


 そんなモノを進んで舐め啜り、笑みを漏らす様な人間には成りたくない。

■エイの独白:異形■

 ……人間の感情というモノは、どうしてこうも不思議なのだろうか。


 目の前でテレビ画面を観ながら、今更ながらにそう思う。

 テレビに流れるのは午後のニュース。その中の特集に、外国で流行しているらしい”肉体改造”を取り扱っていた。


 舌を二股にした者に始まり、皮膚を変形させた者、腕を自らの意志で切り捨てた者、、次々と紹介させる”肉体改造”を行った人々。


 彼等に向けるコメンテーターの眼は冷ややかだが、外国ではそれなりに認められているらしい。

 まあ、流行として取り扱われているのだから当然か。

 その癖、その国では古来から続く人種差別、、宗教や肌の色の違いを理由とした”子供の喧嘩にも劣る愚かなで不毛な争い”が続いている。


 肌の色には意味も無く拘る癖に、自らを異形の肉体に改造する事には何の抵抗も無い人々。

 
 ……伝統を重んじ、流行にも敏感、、か。


 こんな皮肉を浮かべるとは、自分も随分と冷めてしまっているらしい。

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■七夕■
 
  桜花:……空、曇ってるね。

 エイ:そうだね、、まあ、良かったじゃないか。

 桜花:……どうして?

 エイ:一年に一回しか会えないのに、その一回の様子を観られてるなんて嫌だろう?

 桜花:……会えてるのかな?

 エイ:ああ、きっと仲良くやってるよ。

 心配そうに空を眺める桜花に、エイは優しく笑い掛けた。

 ……皆に観えないのを良い事に、一体何をしてるのだろう? そんな事をぼんやり思いながら。

■チョコを求めて■
 
 エイ:そうだな。確かにバレンタインの始まりは、お菓子会社の陰謀なのかもしれない。

 桜花:……。

 エイ:だがその習慣が成立したのは、、その陰謀すら利用して、自身の想い人に胸の内を伝えようとする人が多かったからだ。

 桜花:……。

 エイ:今、流行している”友チョコ”というのもそうだ。友達同士で騒ぎたい人々がいるからこそ、その宣伝は成り立っている。

 桜花:……。

 エイ:…いや、その、、つまりね?

 桜花:……ちょっと待ってて、、冷蔵庫の中だから。


 そう言ってキッチンへと消える桜花を、エイは照れ臭そうに見送った。


 一人になった居間。エイは僅かな笑みを浮かべる。


 それは桜花が作ったチョコへの期待であり、、中々そういう素振りを見せない彼女に慌てて、長々と講釈を始めた自身への自嘲でもある。


 キッチンの方から、小さな笑い声が聞こえて来た。


 それは普段の桜花からは想像出来ない”微笑”。その原因をエイは知っていたが、、、知っているが故に何も言えなかった。

 ……自分もまだまだ子供だな。

 紅潮した頬を撫でながら、エイは再び笑みを浮かべた。。

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■陽光に魅せられて■
 
「太陽は、とても過保護なんだろうね」

「……過保護?」

「だってそうだろう? あの夕日」

「……」

「あれを昔、誰かが”血の色”だと言った」

「……そう言われると、少し不気味」

「でも、綺麗だろう?」

「……うん」

「きっとアレは、太陽が生命を削って輝かせているんだと思う」

「……」

「太陽は、自身が血を流してでも僕達に光を届けたかったのさ」

「……強いね」

「ああ、強いね」


 桜花は知っている。

 シミジミと夕日を眺めるエイこそ、太陽と同じ「強さ」を持つ青年なのだと。



 もしかしたら、神様の救った世界に「夕焼け」は無かったのかもしれない。
 光の支配する「朝」と、闇の支配する「夜」しか無かったのかもしれない。
 いや、、本当は「夜」とも言えない、何も無い「漆黒」だったのかもしれない。

 それを太陽がやって来て、明るい「昼」を作ったのだろう。
 月や星に自分の輝きを与えて、安らかな「夜」を作ったのだろう。
 自分の体を傷付けてまで漆黒に止まろうとし、、昼と夜の間に「夕焼け」を残すのだろう。

 闇に眠る生命を心配して、鮮やかな「朝焼け」を創るのだろう。
 
 母なる星さえも見守る熱い星は、今も空で輝き続ける。 。

■例え話■
 
――シュッ、、、バンッ! コロコロコロ……。


 エイ:‥‥‥。


――シュッ、、、、バン! コロコロ……。


 エイ:‥‥‥。


――シュッ、、バンッ!! コロコロコロコロ……。


 桜花:……なにしてるの?

 エイ:ん? ああ、、おかえり桜花。

 桜花:……ただいま。それで、何やってるの?

 エイ:いや、ちょっと暇潰しにね。


 そう言って、エイは手に持ったテニスボールを壁に投げ付けた。
 エイの手を離れたボールは綺麗な曲線を描いて宙を舞い、壁へと衝突すると床を転がって、、エイの手元に戻ってくる。


 エイ:単調な作業だが、、肉体を使う分、退屈凌ぎになる。少なくとも、テレビやらラジオやらを聴いたり観たりするよりは、、な。

 桜花:……そういうものなの?

 エイ:まあ、人それぞれだけど。僕の場合は、、そうだね。


――シュッ、、、バン! コロコロ……。


 桜花:……強く投げれば強く返り、弱く投げれば弱く返り、、なんだか人間と似てる。

 エイ:壁によって、跳ね返り方が違う所も、ね。強く投げても、弱々しく跳ね返したり、耐え切れずに割れてしまったり。

 桜花:……どんなに弱く投げても、強く強く返してくれたり、決して壊れなかったり。

 エイ:……返して欲しいと思う場所に、ちゃんと返してくれたりとか、な。

 桜花:……誰の事?

 エイ:壁の事だが?


 分かり切った答えに、分かり切った嘘。

 エイはボールをポケットに仕舞うと、夕飯の準備の為にキッチンへと向かうのだった。

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■入り込む夕日を眺めて■
 
 桜花:……子供の頃、、土曜日が好きだったの。

 エイ:土曜日が?

 首を傾げるエイに、桜花は頷きで答えた。短い返事をアクションで返すのは、喋るのが遅い彼女の幼少からの癖である。

 桜花:……子供の頃は、午前中は授業があって、午後はお休みで、、平日でも休日でも無い土曜日が、好きだったの。

 エイ:平日でも休日でも無い、、か。そういえば昔はそうだったね。

 過去の記憶を手繰るように、エイは遠方を眺めながら目を細めた。何かを思考する際目を細めるのは、彼にとっては真新しい癖だ。

 桜花:……今の、休日になった土曜日はなんか苦手。昔のゆらんだ、、休日と平日の混ざったあの空気が、好きだったのに。

 桜花の呟きに、エイは思わず微笑を漏らした。彼女が今の土曜日を「嫌い」と言わずに「苦手」と称したからである。

 きっと今の土曜日にも、昔の面影があるのだろう。だから、苦手に感じても嫌いには成れないのだろう。

■思い違い■

 エイ:僕はね、昔地球を買い被っていたんだよ。

 桜花:……え?

 エイ:子供の頃、初めて世界地図を見た時にね、、それは片面だけだと思ってたんだ。

 桜花:……片面?

 エイ:そう。子供ながらに、地球が丸い事は知っていたけど、、それが一枚の地図に収まっているとは思えなかったんだ。

 桜花:……だから片面。

 エイ:きっともう一枚地図があるか、、或いはまだ、地図と同じ程度の未開発の土地があると、心から信じていたんだ。……ふふ、今思うと実に間抜けだったな。

 照れ笑いを浮かべながら、エイは再び世界地図へと視線を落とした。

■成長■

 エイ:小学一年生だった頃、時折遊びに来てくれる六年生の大きさに驚いていたんだ。……同じ小学生なのに、自身の遥かに越えた高さから見下ろす”お兄ちゃん”と”お姉ちゃん”。僕も彼等のように大きくなれるのか? そんな不安を覚えたよ。

 桜花:……私は六年生になった時に、一年生の背の小ささに驚いたわ。自分の半分近くしかない身長、、かつては私もその程度だった筈なのに、何故かそれが凄く不思議だった。


 お互いに思い浮かべるのは、自身の幼い日。互いのそれ以降の経歴を思えば、この頃が一番良かったのかもしれない。


 エイ:あの頃は良かった、、とは一途に言えないか。僕もまだ、あの頃は無力だったし……。

 桜花:……エイが?

 エイ:ああ。まあ知力・体力的には、同年代の子供の中では優れていたと思うけどね。だけどその反面、、傍に居てくれる人が極端に少なかった。…いや、居なかったな。


 馬鹿な両親のおかげで。

 続けそうになった侮蔑を、エイは胸底に留めた。エイにとっては”馬鹿”の代名詞である「両親」という言葉だが、目の前の同居人にとっては別の意味になる。

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■辛いと言うのは簡単だけど■
 
 エイ:そうそう、言えはしないかな。

 桜花:……どうして?

 エイ:…一人で抱えるのは辛いが、、誰かがこの辛さを知り、悲しむのはもっと辛いから、かな。

 桜花:……だけど、辛そうな姿を見る事しか出来ないのは、もっと辛いし悲しいよ?

 桜花の悲しそうな眼差しを受け、エイは優しく微笑を漏らした。

 エイ:…どちらにしても、辛い事に変わりはないさ。ここでどちらを選ぶかは、聞く者と話す者の違いだろう。

 桜花:……そういう答えって、ずるい。

 エイの言葉にそう答え、桜花は頬を膨らませた。

 …彼女も、同じ事を考えたからである。

■言い回し■
 エイ:昔の自分を語る時、自分の事を「古い友人」と例える事がある。僕はそれが好きでね。

 桜花:……。

 エイ:例えば、、「只の友人」では駄目かな。それでは赤の他人だから。

 桜花:……。

 エイ:かといって、「自分自身」だと正直に言うのも嫌だな。昔の自分は今の自分とは微妙に異なるし。

 桜花:……。

 エイ:他人よりも近く、自身よりも遠い。その絶妙な表現が、「古い友人」だと思うんだ。

 桜花:……エイは。

 エイ:ん?

 桜花:……エイは、昔の自分を「友人」って呼べるの?

 桜花の何気ない問いに、エイは目を丸くした。そして暫し黙考した後、、優しく微笑んだ。

 エイ:ああ。とんでもない悪友だけどね。

■……ふと、考える■
 桜花:……どうして、子供が死ぬと大人はその幼さを強調するの? 命の重さは皆同じはずなのに。

 エイ:ん、そうだね…桜花は今年で何歳だったかな?

 桜花:……エイと一緒だよ。

 エイ:ああ、16歳か。つまりは17年、生きている訳だな。

 桜花:……そうだけど?

 エイ:昨日死んだ子は10歳、、つまり11年生きていた訳だ。

 桜花:……?

 エイ:11年と17年、その差は、、6年だな。6年あれば小学校は卒業出来る。人、本、遊戯、服、土地、未来、、様々なモノを知る事が出来る。出来たはずなんだ。……それを無理矢理、、根こそぎ奪われたのだからな。自然に怒りと、悲しみが沸いてくる。

 桜花:……。

 エイ:その6年を、6年以上の時を過ごし、奪われた時の重大さを知る者なら尚更、ね。そんな所かな? あくまで、僕の考えだけど。

 桜花:……うん。

 それを最後に、二人の会話は止まった。黙ってテレビ画面を凝視する。画面の中では、死んだ子供の母親が泣いていた。

 子供が死んだ悲観性を全面に出して。視聴率を伸ばそうとしている。

 ……不意にそんな考えを浮かべた自分自身を、桜花は心から嫌悪した。

■画面の先に立つ人々■
 エイ:腹が立つな。

 桜花:……え?

 突然の告白。桜花は驚き、隣に座るエイを見た。途端、彼のテレビ画面に向けられた眼光の鋭さに、思わず息を飲む。
 テレビ画面の中では、数年前に幼子を惨殺した犯人の若い男性が、カメラに向かって微笑む姿が写されていた。

 桜花:……非道いよね。人を殺しておいて、、こんな笑顔を浮かべられるなんて。

 エイ:それも、、なんだけどね。

 再び静寂。

 画面はスタジオに移り、その後すぐに「××容疑者に死刑判決!!」と大きなデロップが浮かぶ。
 デロップが消えると、犯人の生い立ちや犯行状況を解説しながら、司会者やコメンテーターである犯罪学者は異口同音に、今回の判決について賛同の意見を述べていた。

 エイ:この方々は、人を殺めた者を殺める事に、何の躊躇いも感じないんだね……。

 吐き捨てるようなエイの呟きに、桜花は返す言葉を持たなかった。
 彼女も何の躊躇いもなく、犯人の死刑決定に頷いていたからである。

■予防線■
 エイ:まさかとは思うけど、桜花は僕の言葉が全て正しいなんて、、思ってないよね?

 桜花:……違うの?

 桜花の反問に、思わずエイは苦みの混ざった微笑を浮かべた。

 エイ:ああ、違う。正しい事もあるだろうけど、間違ってる事もある。

 桜花:……でも、エイは自分の考えを信じてるんでしょ?

 エイ:…ああ。僕自身が考え、導き出した結論だからな。けど、その考えが、絶対に正しい保証は、、無いんだ。

 桜花:……。

 エイ:結論が、ではない。考え方が違うかもしれないんだ。桜花が+に考える事を、僕は-に考えるかもしれない。僕が表に考えた事を、桜花は裏に考えるかも知れない。

 桜花:……それは、、どっちが正しいの?

 桜花の新たな問いに、エイはゆっくり首を振って、、こう続けた。

 エイ:それは、僕には分からないよ。僕は-と表の考えしか知らないのだから。

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■バク怪人の遺言状■
 
*五雪駅駅前商店街:早朝

 人気の無い街道を散歩中の夜沼エイ。
 それを遠くから見つめる、一つの男が居た。
 黒尽くめの服装にサングラスを掛けた怪しい男は、エイが横断歩道で立ち止まるのを確認してから、身体を黒くて小さな球体へと変えた。
 信号が青に為るのを待つエイ。彼の項に、黒い球体が飛び込んだ。

「うっ!?」

 一瞬、苦しそうな呻き声を上げるエイ。
 だが、訝しみながらも青に為った横断歩道を渡っていく。

『くふふ、、くははははははっ!!』

 誰にも聞こえぬ、男の声が響いた。
 
*マンション8階:夜沼宅・玄関

「忘れ物はない?」
「……大丈夫」
「宿題はやった?」
「……昨日は出てない」

 制服姿で靴を履く雛町桜花に、壁掛けの時計を眺めながら話掛けるエイ。

「行ってらっしゃい、車に気を付けてね」
「……もう、子供じゃないんだから」
「はは、ごめん。行ってらっしゃい」
「……ん」

 頬を膨らませる桜花の頭を撫でてから、改めて笑顔で見送るエイ。
 それに笑顔で頷いてから、玄関から出て行く桜花。

「……さてっと」

 玄関の扉が閉まり、、暫くしてから、エイは踵を返した。

(どうにも身体が怠い、、今朝の頭痛の所為か? でも、あの時は直ぐに治まったし……)

 取り敢えずは頭痛薬でも飲もうと、居間へと向かうエイ。

「グゥッ!?」

 だが、突如として強烈な頭痛に襲われて座り込んでしまう。
 頭の奥から、蝕む様に、徐々に広がる様に、痛みは増していく。

(これは、、普通の頭痛じゃない!? まさか、あの時に……)

 一つの予感。
 床を這いながら、今度は必死に自室を目指すエイ。
 自室には、五雪県警の石波光太朗から密かに渡されたブレイカーブレスが隠されている。
 もしもの事態を考え、石波に連絡を取った方が良い。
 
 エイは重たい身体を引き摺り、何とか扉まで進むが、、開いた所でとうとう力尽きてしまう。

 苦悶の表情を浮かべたまま気を失うエイ。
 その様子を窓の外、一羽の雀が眺めていた。


*???

「ぐ、うぅ……?」

 アスファルトの冷たい感触で、目を覚ますエイ。
 既に頭痛は治まっていた。

「僕は、、此処は……」

 身体を起こすと、そこは先程まで居た自宅の廊下ではなかった。

「……五雪商店街?」

 そこは一見すると、エイの良く知る人気のない商店街。
 だが、小さくも大きな差異が有った。

「……何故、この時刻に人が居ない」

 青空には堂々と太陽が昇っている。
 それにも関わらず、商店街の店は閉じたままで、人も居ない。
 車も一台も走っていなかった。現に、エイが目を覚ましたのは車道の上だった。

(集団誘拐、、は有り得ないな。幻かパノラマか……)

 混乱しつつも、必死に思案するエイ。
 やがて溜息を漏らすと、いずこかへと歩き始めた。

*五雪商店街?:街道

 朝の散歩と同じコースで、自宅への道を進むエイ。
 だが丁度、頭痛を感じた横断歩道を前に立ち止まってしまった。

「マンションが、、無い?」

 本来ならこの位置で見える筈のマンションの姿がない。
 いや、一応は有る。
 だが、それはまだ「マンション」ではなく「鉄筋の寄せ集め」だった。

「……まさか!」
 
 横断歩道を曲がり、裏道を駆け抜けるエイ。
 見覚えのある家々が流れるが、相変わらず人とは会わない。
 
「……!!」

 一つの住宅を前で立ち止まるエイ。
 表札に書かれた名前は、、夜沼。
 

 エイの脳内で”あの日”の事がフラッシュバックする。

 五雪県警から帰ると、普段は無表情の母親が笑顔で迎えてくれた事。
 居間に向かうと、普段とか比べ物に為らない御馳走が並べられていた事。
 椅子に座らされ、弟を身籠もったと告白された事。

「だから、もう貴方は必要ないの」

 首に纏わり付く紐の感触。
 咄嗟に殴り飛ばした、生命孕む女性の肉体の感触。
 帰って来た父親の拳の感触。
 それを受け止めて蹴り飛ばした、鬼の形相をしていた男性の顔面の感触。

 あの日、石波に語った理想を叩き折った現実。

 沸き上がった、怒りと失望。


「……成程」
 
 片手で頭を抑えながら、エイは虚空を睨んだ。

「此処は、僕にとって思い出したくない頃の……」

 響く足音。
 エイを挟む様に、道路の両端から駆け込んで来るKOGの戦闘員。

「KOG(キル・オブ・ガバメント)まで再現か、、上等だ!」

 エイは怒りに震えながら構えた。


*アイキャッチ*


*夕方:七瀬家:台所

「七瀬-、お鍋はこれで良いの?」
「はい、大丈夫ですよ。それじゃあ、次は……」

 二人仲良く、夕飯の準備をする七瀬八重と潦景子。
 食器を用意しながら、その様子を若干悔しそうに見つめるのは青野真紀子。

(何時か料理を覚えたる)

 と、景子に対抗意識を燃やす。

 真紀子の様子を含めて、微笑ましそうに見つめているのは由崎多汰美と七瀬幸江の二人。

「と、ななせを呼んできますね」
「ええ、お願いね」

 六人目の皿を用意した時点で、多汰美は未だ台所へと姿を見せていない家族、七瀬ななせを呼びに行く。
 

*七瀬家:居間

 多汰美が居間に入ろうとすると、突然風が巻き上がった。

「きゃあ!?」

 慌ててスカートを抑える多汰美。
 風は直ぐに収まり、改めて居間に入る多汰美。
 部屋の中には擬人化を果たしたななせが難しそうな顔をして、一羽の雀と対面していた。

「どうしたん、ななせ? そんな顔して」
「……ああ、多汰美さん。少しばかり、五雪町で厄介な事が有ったみたいです」
「厄介な事?」

 疑問を頭に浮かべる多汰美の横で、ななせは虚空に四角を描いた。
 と、その枠内の風景が変わり、倒れ込んだエイの姿を映す。

「エイ君!?」
「アイツが倒れたと連絡が有ったから、もしやと思えば、、夢魔の類か、厄介かもしれないな」

 雀ネットワーク。
 日本に住む野鳥達が迫り来る外来種に対抗する為に創り出した情報網の一つで、主に市街地で起きた出来事を連絡する機関である。
 ななせは一時期、五雪町でダークショッカーと戦っていた事が有る。その事を知っていた雀が、嘗ての戦友たるエイの危機を知り、ななせへと伝えたのだ。
 尤も、情報は複数の雀達を伝言して行く為、どうしても到達までに時間が掛かる。現に、朝方に発せられた今回の情報は夕方に為って漸く届いたのだ。

 ななせはもう一度虚空に四角を描く。
 すると、今度は無人の五雪町商店街で戦闘員と戦うエイの姿が映る。

「ふう、まだ無事みたいだな」
「これは!?」
「エイの夢です。正確には、誰かに強制的に見せられてるんでしょうが」
「見せられてる?」
「ええ」

 二人が話す間にも、戦闘員はエイに襲い掛かり、叩き伏せられる。
 冷静にその様子を眺めるななせ。

「狙いは夜沼エイの精神の破壊。そして、精神が破壊された肉体の支配でしょうね」
「だ、大丈夫なん!?」
「戦闘員相手に後れを取るエイじゃないですよ。唯……」
「唯?」
「恐らく、大元の怪人を倒さないと、エイは夢から目覚められない」
「そんな……」

(下手に入れば私も惑わされる、、大元が出るまでは援護も出来ないか。耐えろよ、エイ)

 絶句する多汰美の隣で、ななせは善戦する戦友を見据えた。 


*夢の世界:五雪町商店街

「はあっ!!」
「ギィ!?」

 何度か襲い掛かってきた戦闘員の集団。
 その最後の一人を、雨よけを支える鉄柱へと叩き付けるエイ。
 戦闘員は短い断末魔を上げた後、煙の様に消えていった。

「はぁ、はぁ、、何時まで前座でやり過ごすつもりだ! いい加減に出て来い!!」
「くふふ、、流石は夜沼エイ。よくぞ、此処まで持ち堪えたな」

 頭上から響く声。
 エイが見上げると、並び立つ店の一つに男の影。

「くふふ、どうだったかね? 懐かしい記憶を彷徨えた気持ちは」
「ああ、最高だったよ。貴様に、黄泉路への旅を送ってあげたくなる程にね。……貴様が、今回の黒幕か!」
「いかにも! 俺の名前は幻影バク!! 今は無きダークショッカーに創られた改造人間だ!!」
「バク、、古代ヨーロッパに実在し、ユニコルンの夢を食べ絶滅させた幻獣!」
「その通り! バクは自らを夢と化し、ユニコルンの精神を殺す事で肉体を得たのだ!!」
「成程、、貴様の狙いは僕の肉体。そして、ブレイカーZERO!」
「流石だな! 貴様の精神を殺し、肉体を得て、ブレイカーZEROとして悪行の全てを果たしてやる! ブレイカーZEROは血で汚れた、悪魔の名と化すのだ!!」
「生憎だが、ブレイカーZEROの名が墜ちる事は無い!!」
「くふふ、それはどうかな?」

 ポケットから、一つの腕輪を出す幻影バク。
 エイも見慣れた腕輪の名は、、ブレイカーブレス。

「ブレイカーブレス!?」
「夜沼エイ、貴様は、ブレイカーZEROに殺されるのだ!!」

 幻影バクの叫びに応え、漆黒のブレイカーZEROへと姿を変えるブレイカーブレス。
 そして、幻影バクも人間の姿から怪人態へと変身した。

「2対1だ、流石の夜沼エイとて、変身も出来ぬのでは太刀打ち出来まい!!」
「クッ!!」

 迫る二体の驚異に、それでもエイは構えた。


*七瀬家:居間
 
「……奴が黒幕か!」
「ななせ!?」 

 幻影バク出現を知ったななせは、逸る気持ちを抑えながら、映像を映す虚空を左腕で縦に割った。
 大きく開かれる空間。その向こうでは、エイが幻影バクとブレイカーZEROの猛攻を受けていた。

「少し出掛けて来ます! 帰りは遅くなるかもしれませんので、夕ご飯は先に食べてて下さい」
「う、うん! ななせ、気を付けるんじゃよ!?」
「ええ、大丈夫です! ……ああ、それと」

 不安そうな表情を浮かべる多汰美に、ななせは悪戯な笑みを浮かべて囁いた。

「黒レースみたいな刺激的なのも良いですが、今日みたいなシンプルな物も私的には好みですよ」
「なっ!?」

 思わず赤面する多汰美を尻目に、ななせは空間の裂け目に飛び込む。
 その顔に、笑みは無かった。


*夢の世界

 五雪町の上空。
 自由落下を続けながら、ななせはその身を変える構えを取った。

「……変・神!!」

 稲妻が、走る。 


*夢の世界:五雪町商店街

「くはは、食らえ! 食らえ!!」
「この、数ばかり!!」

 幻影バクの放つエネルギー弾を必死に躱すエイ。
 だが、それに気を取られすぎてしまい、ブレイカーZEROの接近に気付けなかった。

「ブレイカーキック!!」
「ぐ、おおっ!!」

 ガードごと、商店街のシャッターに叩き着けられるエイ。
 ダメージは大きいが、まだ勝利を諦めた訳ではない。

(く、、せめて1対1に持ち込めれば……!)
「これで終わりだ! 死ね、夜沼エイ!!」

 シャッターに埋まったまま、身動きが取れないエイに襲い掛かろうと、右腕のエネルギーライフルを構える幻影バク。
 だが、その足下に稲妻が落ち、弾き飛ばされた。

「ぐああっ!?」
「稲妻、、まさか!?」

 何とかシャッターから抜け出し、エイは空を見やる。
 すると予想通りの姿。

「仮面ライダー、、ナナセ!!」

 髪を金髪に変え、腰にWライダーが移植したプロトタイフーンを露出した姿。
 七瀬ななせが戦闘形態「擬神化」を果たした姿、それこそが仮面ライダーナナセである。

「ななせ!」
「済まない、エイ。遅く為った」
「いや、、良く来れたね!」
 
 久方振りに会う戦友達。
 嬉しそうに握手をする二人を、復活した幻影バクと漆黒のブレイカーZEROが睨め付ける。

「仮面ライダーナナセ! 貴様まで現れるとは!!」
「ふん、未だに滅びた組織の為に戦うとはな。こんな馬鹿げた事、いい加減にやめたらどうだ!」
「黙れ! 組織は俺が再生させる! 闇に墜ちたブレイカーZEROとしてなあ!!」

 幻影バクの声に応える様に、前へと出るブレイカーZERO。
 迎え撃とうとするナナセの腕を、エイが掴んだ。

「エイ?」
「そっちは僕が何とかするから、ななせはバクの方を頼む」
「策はあるのか?」
「銃はホルスターに、刀は鞘に、、さ!」

 ブレイカーZEROに向かって駆け出すエイ。
 
「ふん、馬鹿め!」
「馬鹿は御前だ!」

 幻影バクの乱射するエネルギー弾を、同じく稲妻で打ち落とすナナセ。
 爆風に煽られながら、接近するエイとブレイカーZERO。
 ブレイカーZEROは必殺技、ブレイカーフィニッシュを放つ。

「甘い!」

 自分自身で考え、使い続けて来た技を見事に躱すエイ。
 大技の直後で硬直するブレイカーZEROの右腕を掴むと、巻かれていたブレイカーブレスに左腕を叩き付けて叫んだ。

「チェンジ! ブレイカーZERO!!」
「何!?」

 ブレイカーブレスはDNA登録された装着者の肉体反応と、パスワードボイスに依って変身機構を解放する。
 エイは幻影バクの手で無理矢理具現化されたブレイカーZEROを使い、本来の変身を果たしたのだ。

 掻き消える、漆黒のブレイカーZERO。
 代わりに出現した、光り輝く正義の戦士。

「ブレイカーZERO!!」
「成程、、収まるべき物は収めるべき者へ、か」

「ぐおお、、おのれー!!」

 自棄とばかりに、エネルギー弾を乱発する幻影バク。
 それを躱しながら、ブレイカーZEROは駆け、ナナセは跳んだ。

「行くぞ、ブレイカーZERO!」
「ああ、仮面ライダーナナセ!!」

 稲妻を纏いながら、幻影バクに向けて加速するナナセ。
 光を纏う剣を輝かせながら、幻影バクに接近するブレイカーZERO。

「ライダー、、落雷キック!!」
「ブレイカーフィニッシュ!!」

「ぐああああああああああああああ!!!!!!」

 二人の必殺技を受けた幻影バクは吹き飛ばされ、空中で爆惨した。

 立ち上がる黒煙を眺めながら、二人は改めて握手を交わすのだった。

 
*マンション8階:夜沼宅・台所

 調理中のエイ。
 暫しして、玄関の扉が開き、閉じられる音。
 そして近付いてくる、見知った気配。

「……ただいま」
「ああ、お帰り。今日は遅かったね」
「……もう直ぐ文化祭で、、何故か実行委員に」
「ふふ、それは大変だ」

 何時もより少しだけ疲れた顔の桜花。
 何時もと大して変わらない顔のエイ。

 テーブルに置かれた料理から、美味しそうな湯気が立つ。


*七瀬家・台所

「……」
「……いい加減、機嫌を直してくれると嬉しいんですが」

 手を着けられていない料理が並べられたテーブル。
 それを囲む様に置かれた椅子にそれぞれ座った6人。

 ななせが困った様な顔で話し掛けると、多汰美はぷいっと横を向いてしまった。
 どうやら、機嫌を損ねてしまったらしい。

「にしても、凄かったなあ」
「本当ね、あれが噂のライダーキック……!!」
「でも、あんまり危ない事しちゃ駄目ですよ?」
「……はい」
 
 画面越しに見た、ななせの戦闘シーンにハシャいでいる八重、真紀子、景子。
 此方の反応にも、ななせは頭を悩ませる。

(恨むぞ、エイ……!)
「はいはい、御話はその位にして!」

 幸江の注意で、雑談を止めて手を合わせる一同。
 ななせも、心中での恨み節を抑えて手を合わせる。

ナレーター
「ダークショッカー復興を狙う幻影バクの企みは、ブレイカーZEROと仮面ライダーナナセの手で粉砕された。彼等が正義を忘れぬ限り、悪の芽が再び花開く事は無いだろう。だが、今は取り敢えず……」

 八重、真紀子、多汰美、景子、幸江、ななせ、エイ、桜花の8人がそれぞれ手を合わせて……。

「いただきます!」
 
 

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■退院風景■

「これを、、持っていってくれないか?」
「……ブレイカーブレスを?」

 石波光太郎が差し出した鈍銀色の腕輪――数日前まで愛用していた装備――を、夜沼エイは訝しそうに見据えた。

 新居への送迎の名目で駆り出された覆面パトカーの中には、運転席の光太郎と助手席のエイしか居ない、後部座席には入院時に使用したエイの私物が置かれていた。

「それは別に構わないけど、、良いの? 前の所有者とは言え、、いや、だからこそ、国家機密をこんな子供に託して……」
「公の所有者は俺になっている。この事は内密にしておいてくれ」
「……そっか、、それじゃあ何時も通りに着ける訳にはいかないか」

 そう言うと、エイは光太郎から受け取った腕輪を、自身のコートのポケットへと放り込んだ。 

「二年近くこれを使ってきたが、こんな扱い方は初めてだよ」
「……何も、、聞かないんだな」
「僕が聞かなくても、言うべき時が来たら、、石波は言うだろう?」
「……ああ、、そうだな」

 安心したような、、それでいてどこか気を病んでいるような光太郎の微笑に、エイは出来る限りの明るい笑みを返した。

 結局、、こちらも微笑の域を超えていなかったが。
 
 

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■恐怖! 旋風鬼の日本灼熱化作戦!!■

 8月は初旬のとある日。
 語雪町は猛暑に見舞われていた。

*エイと桜花のマンション・リビング

 テレビ画面には真夏日だと語り、熱射病対策を訴える女性キャスターの姿。
 額に濡れタオルを置かれた夜沼エイが、ソファで横に為ったままテレビを観ている。

「……大丈夫?」
「ん、、ごめんね。まさか、僕がこんな事になるとは……」

 エイは夏風邪に掛かっていた。
 氷枕を交換する桜花に隠れて、テレビは熱中病に対する警告へと移り変わった。

「何も無ければ良いんだけど……」

*語雪町内某所・とある一般家庭

 台所で食器を片付けている女性。
 そこに、遊びから帰って来た子供がジュースを取りに来る。
 子供はリビングへ移動し、扇風機を動かす。
 家の外、謎の影が電線を掴む。
 突然、扇風機は熱風を出し、子供は熱さに倒れてしまう。
 倒れた音に気付いた母親は、子供の姿に悲鳴を上げた。

*ダークショッカー基地・作戦室

 ダークショッカー幹部・プロフェッサー坂東に実験結果を報告する旋風鬼。
 彼は電線と自身を繋げる事で、扇風機から流れる風を熱風に変える事が出来る怪人だった。
 満足げに報告を聞いたプロフェッサー坂東は、今度は地域単位での実験を指示する。
 了解し、作戦室を後にする旋風鬼。

*語雪町某所市街地・電柱前

 複数の戦斗員を引き連れ、電柱へ上った旋風鬼は早速実験を始めようとする。
 そこへ接近する一台のバイク。
 飛び降りた青年は空高く跳躍すると、旋風鬼に飛び蹴りを喰らわせて叩き落す。
 落下した旋風鬼は激怒し、着地した青年へ戦斗員と共に襲い掛かる。

「オノレ! 何者かは知らんが、俺の邪魔をした事を後悔させてやる!!」
「……ははっ! 俺の名を知らないとは、、どうやら貴様も大した事は無いらしいな」
「何だと!?」
「俺の名は風見志郎! そして又の名を、、フン! 変身、、ブイスリャァァ!! トオッ!!」

 青年――風見志郎――は仮面ライダーV3に変身し、旋風鬼と戦斗員に立ち向かう。

「V3! 貴様が仮面ライダーV3か!!」
「行くぞ! ダークショッカー!!」
「ギイイ!!」

 戦斗員を難なく倒すV3は、旋風鬼との一騎打ちに移る。
 乱戦後、頭部のプロペラで熱風を送る旋風鬼。
 V3はプロペラを破壊しようと跳躍する。

「V3、、きりもみチョップ!!」

 だが、突然旋風鬼側頭部の角型プロペラが動き、V3の腕を挟み込む。

「ぐあっ!?」
「ふ、、親の教わらなかったか? 扇風機の羽に触れては駄目だとな!!」

 V3の腕を切断しようとする旋風鬼。
 だが、その胸を光線が直撃し弾け飛ぶ。
 その場に崩れたV3が振り向くと、ブレイカーカノンを携えたブレイカーZEROの姿が。

「ブレイカーZERO!!」
「済みません、、遅れました……」

 一方、旋風鬼は起き上がるも身体から白煙を上げている。
 偶然にも、ブレイカーカノンは旋風鬼の熱風発生装置を破壊していた。

「ええい! この勝負、預けるぞ!!」

 退却する旋風鬼。
 それを確認したV3とブレイカーZEROも変身を解くが、エイはその場に倒れてしまう。

「お、おい! エイ、、痛ッ!?」

 慌てて助け起こそうとし、顔を顰める志郎。
 彼の腕には、旋風鬼に挟まれた痕が残っていた。

*アイキャッチ。

 
*アイキャッチ後、病院内

 病室の前で佇む志郎。
 暫くして扉が開き、中からエイが出て来る。

「エイ、大丈夫か?」
「ええ、心配掛けました。解熱剤と抗生物質を貰いましたから、、風見さんは?」
「ははっ、こんなのは、怪我の内にも入らんさ」

 腕をガーゼで押さえたエイに、志郎は腕を構えてみせる。
 廊下を、玄関に向かい歩く2人。周りには、かなりの数の患者が治療を待っていた。
 途中、Aパート登場の主婦がベッドの上に座る子供を抱き締めている姿が見える。
 どうやら、子供は何とか一命を取り留めたらしい。

「……早く、アイツを倒さなくちゃいけませんね」
「ああ、そうだな」

 2人は病院を後にした。

*ダークショッカー基地・作戦室

「馬鹿者! 熱風発生装置を破壊された挙句、オメオメと逃げ帰って来おって!!」

 旋風鬼を怒鳴りつけるプロフェッサー坂東。
 しかし、旋風鬼の為に新たな作戦を考えていた。
 作戦室に入る科学班。その手には一つの扇風機。
 
「プロフェッサー、、これは?」
「ふふ、、電線を使えぬならば、扇風機その物を変えてしまえば良い!!」

*語雪町内・公園広場

「さあ、いらはい! いらはい! 扇風機の大特価だ!!」

 親子連れが遊ぶ公園内へ突如、扇風機の販売が始まった。
 始めは訝った大人達も、猛暑とあまりに低い値段と高性能さに、我先にと扇風機を買い求める。
 客の相手をしながら、販売員は意味深に笑った。

*エイと桜花のマンション

 一度、マンションに戻ったエイと志郎。
 すると、テーブルの上に新しい扇風機が置かれていた。
 桜花に訊ねると、広場で売られていたらしい。
 その高性能さと値段を疑問に思い、買って来たのだそうだ。
 エイと志郎は扇風機を分解、すると中に、ダークショッカーの紋章の刻まれた謎の機械が取り付けられていた。

「これは!」
「チッ、、扇風機自体に熱風発生装置を取り付けたか」
「……熱風発生装置?」

 突然、起動し熱風を発生させる扇風機。
 見れば、謎の機械のランプが点滅していた。
 志郎が謎の機械を取り出すと熱風は止まったが、機械のランプは点滅したままだった。
 
「遠隔操作、、操っているのは旋風鬼!」
「しめた、この電波を辿ればヤツの居所が分かる!!」

 マンションを後にする、エイと志郎。
 残された桜花は、扇風機の残骸を気味悪そうに眺めていた。

*語雪町某所・広場

「ガハハ! 愚かな人間共め、扇風機に仕組まれた熱風で焼け死んでしまえ!!」

 電波を発しながら、勝ち誇る旋風鬼と戦斗員。
 そこに、二台のバイクが駆け付ける。

「ぬう、貴様等!!」
「旋風鬼!」
「これ以上の悪事は、俺達が許さん!!」
「ええい! かかれ戦斗員!!」
「ギイイ!!」

 迫る戦斗員を蹴散らす、志郎とエイ。
 やがて、後方へと跳躍して距離を得ると、その身を変える為の構えを取る。

「変身、、ブイスリャアアッ!!」
「チェンジ! ブレイカーZERO!!」

 閃光の直後、立ち並ぶ二大戦士の雄姿。

「仮面ライダーV3!!」
「ブレイカーZERO!!」
「行くぞ! V3!! ブレイカーZERO!!」

 旋風鬼と戦斗員に立ち向かう二人の戦士。
 戦斗員を蹴散らし、旋風鬼との戦いに移る。
 V3とZEROを相手に互角の戦いを繰り返す旋風鬼。
 頭部のプロペラで熱風を発して2人を追い詰める。

「く、、やはりあの羽をどうにかしないと!」
「任せろ! トオオッ!!」

 大空へ跳躍するV3。
 フライングチョップを放つと読んだ旋風鬼は再び側面の羽を動かそうとする。
 しかし、V3は羽の中心に拳を叩き込む。

「V3! スクリューパンチ!!」
「ギャアア!?  お、俺のプロペラが!!」

 根元を砕き、プロペラを破壊するV3。
 悶絶する旋風鬼を、2人は一気に攻め立てる。
 連続パンチにWキック。
 旋風鬼がふらついた所で、揃って必殺技を放つ。

「V3、、反転キック!!」
「ブレイカーフェニッシュ!!」

 爆発、四散する旋風鬼。
 立ち昇る黒煙を、2人の戦士は黙って見送っていた。

*語雪町某所・道路脇

 額にピタクールを張ったエイと、彼の隣に立つ桜花。
 2人に別れを告げて、志郎はバイクを走らせる。
 その様子を、2人は暫し見送るのだった。

*バイクを走らせる志郎と、歩くエイと桜花を交互に映しながら。

「日本の夏を狂わせるダークショッカー恐怖の策は、我等が仮面ライダーV3の力を借りたブレイカーZEROの手で砕かれた。しかし、奴等の魔の手は未だに消え去った訳ではない。負けるな、夜沼エイ。戦え、我等のブレイカーZERO!!」
 
 

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■夢■
 
「……」
 
「ふふ、今日も良い天気だね」
 
「ん、、そうだね……」
 
「……」
 
「……人は、進化する存在だと、未来へと歩み続ける存在だと思ってる」
 
「……うん」
 
「だから今、僕のしている事はきっと良い事じゃない」
 
「でも、お兄ちゃんはそうしてる」
 
「ああ、少しだけ疲れてしまったから……」
 
「……」
 
「でも、どうやら、もう休み時間は終わりみたいだ」
 
「……行くんだね」
 
「ああ、そろそろ頃合かな」
 
「行って、どうするの?」
 
「戦うさ、自分の世界を守る為に」

「……今までみたいに?」

「それが、僕の望んだ事だから……」
 
「お父さんと、お母さんは?」
 
「……見守るよ、これからも。頼り無いだろうが」
 
「うん、分かってるよ」
 
「……そうか」
 
「でも、信じるよ。お兄ちゃんは、そう云う事には責任を持ってるから」
 
「……行って来る」
 
「行ってらっしゃい、、あ! 待って!!」
 
「ん?」
 
「最後に1つ、、良い?」
 
「どうした?」
 
「……ボクの分まで、、生きて」
 
「……ああ」
 
 
 弟の声に押され、青年は再び目を覚ます。
 例えそれが、己が罪への見苦しい言い訳が観せる幻だったとしても。
 青年は、再び目を覚まし、立ち上がる。
 
 

 
 疲れた時には、無理をせずに休みましょう。
 壊れた時は、動こうとせずに眠りましょう。
 弱り切った心が、再び色と力を取り戻します。
 走り続けた頭に無い答えが、不意に浮かびます。
 
 

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[06/30 暮森ヒロト@管理人]
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お誕生日メモ

  九識     年明け メア三姉妹  1月13日 コスモ    4月03日 ファル    4月05日 凜花     4月15日 アイリ    4月28日 楠木理香   5月23日 楠木れたす  5月31日 水谷みう   6月   シュリ    6月10日 暮森ロゼ   7月06日 翠      8月03日 雪姫     9月10日 風花&翔矢  10月02日 昇&日菜   11月09日