メモメモ。

「…これから、どうするつもりですか？　もう歩さんに”持たざる者の強さ”はありませんよ？」

　それは鳴海清隆に全てを奪われ、更には奪われた物を取り戻す時さえも失った歩だからこそ、持つ事が出来る力だった。
　しかし、今の歩は未来を、時を得ていた。清隆が中心となり進めていた特別医療チームの研究により、歩は細胞の老化を抑える事に成功しているのである。

　未来を手に入れた歩がどういう選択をするのか、、ひよのは黙って歩の返事を待った。

「…生き延びた以上、今までの様にはいかないだろうな」

　暫しの沈黙の後、歩は溜息混じりに言葉を続けた。

「入院中、俺は自分の音楽を取り戻した。残された時間では、それが精一杯だと思っていた」
「だけど、歩さんは生き延びました。鳴海清隆氏が結成した医療チームや、火澄さんの犠牲で…」
「…そのおかげで、俺には奪われたモノを取り戻す時間が出来た。だから、俺はこれから先、今まで奪われたモノを取り戻さなけりゃならない」

　歩は諦めとも安堵とも取れる穏やかな笑みをひよのに向けた。

＊


　サブタイトルを付けるなら「奪われる時間は終わった」かしらね？　……流石にストレート過ぎるか。