廃墟の語り場 A bird having a tusk後編ですよ~。
トリコロ、仮面ライダー、その他四コマ萬画やら普通の萬画やらを読んだり語ったり、対話式私信を送ったりする場所です。
作成日2006年4月3日、移転日は2009年5月13日。
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 オリジナル小説の後編です。
 

 
 昔、一羽の鴉が居た。
 
 自然の中に産まれ育ち、やがて1人の老紳士と出会った牙を持つ鳥が。

 老紳士を慕い、生涯を終えるまでの短い時を共に過ごした”彼”が手にしたのは1つの名。
 
 その身を悪魔に変えられようと、決して忘れる事の無かった名。

 クロウ。

 それが、一羽の鴉だった少年の名前だった。


〇A bird having a tusk後編〇

「今よりこの場を以て、御主人に与えられし[クロウ]の名、、お返しします」

(え……?)

 驚愕し眼を見開く少女を尻目に、少年は言葉を続ける。

「貴方と過ごした日々のおかげで今の俺が居ます。これまで、ありがとうございました」

 静かに頭を下げる少年。少女はその姿を黙って見つめる。
 やがて少年は頭を上げると、まるで糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。
 
「ちょ、ちょっと!?」
「ふう……」
 
 尻餅をついたまま、少年は頭に手を添えて笑った。

「緊張したよ……」
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫」

 少女が差し出してくれた手を支えに、少年は立ち上がる。

「帰るか」

 墓石を一瞥し、そのまま歩きだす少年。

「え、ちょっと待ってよ!」

 荷物を拾い慌てて追い掛ける少女。

 二人が去った墓石からは、白い煙が空に向かい淡々と昇り続けていた──。



「これが、、クロウ君の出来なかった事なの?」
「ああ、そうだ」

 立ち並ぶ墓石の中を、2人は駐車場側の出口を目指して歩いていた。
 隣りに追い着いた少女の問いに、少年は歩みを止めぬまま答える。

「人間に飼われる動物にとって名前とは、、主と己を繋ぐ鎖のようなモノだ。そしてそれは安泰の約束であり、自然との決別の証でも在る」
「……そうだったんだ」
「まあ、全ての生物がそんなに難しい事を考えている訳では無いんだけどな。これはとある人の受け売りなんだ」
「とある人?」
「ああ、、俺より先に俺と同じ苦しみを味わった人の、、人にされてしまった獣のな。と、それは良いとして……」 
 
 稲妻を纏う銀髪の青年を脳裏に浮かべながらも、少年は話の筋を元に戻す。
 
「本来なら俺は二ヶ月前、、君と出会った時に[クロウ]の名を返さなければならなかったんだ。あの時から俺にあるのは前を歩む[主]ではなく、隣に居てくれる[恋人]だったのだから。だが……」
 
 少年は少女に顔を向けた。いつものどこか強気な表情ではなく、心底弱り切った眼差しで。
 
「……何度か墓参りに来てみたが、結局一人では言えなかった。恐かったんだ、御主人との鎖を切るのが」
 
 自嘲する少年。困った事にこの少年には年相応の笑顔よりもこういう、年不相応の表情が似合う。
 
「情けないよな。家に帰れば君が居てくれるのに、もしも君が居なかったらと考えて、、それが恐くて震えてしまうんだ」
「そうだったんだ、、ねえ? 今も恐いのかな」
 
 サラリと出て来た[恋人]の単語に頬を染めながら、少女は心配そうに少年を見下ろす。

「ああ、だから」

 突然右手を伸ばし、彼女の手をやや乱暴に掴む少年。

「手、握ってていいか?」

 俯きがちに尋ねる少年。
 捕まれた手の平から、彼の震えが伝わってくる。

「うん、いいよ」

 優しく少年の手を握り返す少女。
 少女には仕えし主も、変えられた身体も無い。
 名前は親から授かった物だし、束縛も無ければ約束もされていない。
 元より少年が過去を語らない性格な為に、詳しい事も殆ど理解できていない。

 それでも、今日の少年の行為がとても勇気がいる事だというのは理解出来た。

「私は、アナタの恋人だもん」

 頬を染めながら、少年はゆっくりと歩み始める。それに続く少女。

 鴉の姿を捨てた少年と、鴉だった彼に恋をした少女は帰路を進む。

 新たなる[二人]の居場所へ──。
 


「ところでさ」
「ん?」

 墓石の群れから出て、砂利を敷いただけの駐車場を抜けて。
 歩道を歩きながら、思い出したように問い掛ける少女。

「これからはどう呼んだらいいの?」

 ふと、少年の歩みが止まる。どうやら何も考えていなかったようだ。

「はて、どうしたものか……」
 
 頭を抱える少年。あれこれと考える姿をやや呆れ顔で、しかし笑顔で少女は見つめていた。

 


 はい、此処までお読み頂きありがとうございました。
 今回登場の2人ですが、バッチリ「ブレイカーZERO」と「擬人化ななせ」とも繋がってます。てか、栞の方は「An excuse」で先に登場してますね。
 
 

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BlogPetのハット URL 2008/03/05(Wed)10:02:53 編集
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